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読書感想小説

【ネタバレ有】斬首の森/澤村伊智【初読感想】

この記事は約9分で読めます。

どうも。

タネが分かればミステリー、タネが分からなければホラーという言葉をしみじみを実感中。

まあ、あれだ。
ミステリーの中には「●●伝説殺人事件」みたいな、地方の伝奇にちなんだ殺人事件があるし。
ホラーについても呪いの根源を辿っていけば「●●事件の被害者」が呪いだったりするので、親和性が高いというより、そもそもミステリーとホラーって紙一重なんだろうな。

そんな紙一重のミステリーとホラーを融合させたらどうなるん? みたいなのが、今回読み終わった「斬首の森(澤村伊智)」です。

ミステリーとホラーの間をいったり来たりしつつ、最後にホラーのほうへウルトラC着地をしてる?!

ウルトラC加減がすごい。

ホラーだって分かってたよ?
だってタイトルが「斬首の森」で帯も帯ですからね!
これでホラーじゃなかったらむしろそっちがびっくりする……んだけど、最後のホラーへのウルトラC着地がまじでウルトラC過ぎた。

……、伏線あったっけ? これ。

「……多分ですけど、Tの偉い人が本当にほしいのは、死体です。そこそこ健康で、要らない人の死体。集めて、殺して、埋めてる。ラップでグルグル巻きにして」(P272)

あー、なるほど。
だから研修と評してリンチまがいのことをしてたのか。(リンチまがいな事を受けて死亡した身体がそこそこ健康なのかは別にして)
で、ラップ巻きにして埋めてたのか……。

手際が良かったのも、ずっとそうやって死体を使ってきたからで。
Tの偉い人も身体をすげ替えて生きてるんだ?

でも、鮎美ちゃん、その死体の首を切断して、自分の首とすげ替えるって、どこで気づいたんだよ?!

この話でさらりと怖いのは、鮎美ちゃんかもしれない(森で遭難した普通の女の人が導き出せる発想じゃねぇ)

「あの森の植物を食べた生き物は、分裂して増殖するようになるんだよ。そっくり同じものがいくつもコピーされる」(P248)

「斬首の森」の仕様は、わかった。

増殖も分かった。
ようは沼男みたいなもんだ、わかった。
分裂&増殖って、ホラーっぽいよなぁー。(ホラーです)
自分とおなじものが生まれる。だから気持ち悪い。だから先人達は手探りで対処法を探して、首を切ったら増殖しなくなったまでは分かる。
で、その化け物達を葬ってきたから「斬首の森」と呼ばれたのも分かる。
討伐の木にぶら下がっている刃物=始末してきた化け物(増殖した生物)たちの数なのもわかった。
で、そこに逃げ込んでしまった主人公達の末路も、おおむね想像できる。

そのあたりはミステリ-なので、答えがある。
作中の謎にも答えがある。
首だけが残ったのも、首を切れば増殖は不完全なものになるからで、切断された首を置き去りにして不完全に増殖した身体が殺害現場から離れたから。

時々出てきた化け物も、不完全に増殖した仲間達。

ようは、隕石が落ちた結果生態系が狂った森で起こるサバイバルミステリー(ホラー)。

うん。分かる。
分かるんだけど。

なんで、死体(増殖していない人間の死体)と自分の首をくっつけようとしたのかなぁ?

……いや、ここだけ、分からん。

一気に押し寄せてくる、ホラー感。

起承転結の転まではミステリー多めのちょこっとホラー感だったのが、結で一気に押し寄せてくるホラー。
ミステリーが続いて、「そろそろ犯人が分かるのかなぁ」と思っていたら、最後にホラー要素が全力で迫ってくる。
やばい研修(人が死ぬようなやつ)から逃げ出した5人を待ち受けるサバイバルミステリーが、ホラーにシフトチェンジしてる。
最初に犠牲者だった太刀川さんを殺したのはクマかTか?(結局増殖しかかってた太刀川さんを鼓麻が殺したんで、Tが始末したって推理は正解だった)ってなってた頃が遠い出来事すぎる。

久保君の首を切り落とす鮎美ちゃんの思考が分からない。
ヒント……、ヒントっぽいものがないんだよ……。

今までの裏切りと殺されるかもっていう状況から、確実にとどめを刺すために首を切り落とすまでは分かるんだけど。
だからってそこから、首をすげ替えるのは……、やっぱり、どういう発想……。

「研修」から逃げ出してきた5人が次々に死んでいって、首だけ置き去りにされてる状況。
この異常な状況で、首を交換すればいいって発想に辿り着いたのがウルトラC着地のホラーだよ。鮎美ちゃん……。

もう事態が事態なだけに(仲間は次々に殺されて首だけになるし、生きてた仲間も目の前で増殖して化け物じみた姿になっていくし)、ほとんどクトゥルフ神話TRPGの神話技能並に直感で「そうだ。首をすげ替えたらいいんだ!」となった可能性もあるけど、ふつうの人間はそもそも他人の首を切断できないんだ……)

やっぱりこの作品、タネが分かればミステリー、分からなければホラーって言葉がぴったりだと思う。
登場人物達の死は全員説明がついたし、「斬首の森」の意味も分かったんだけど。
最後はホラーだった。

鮎美ちゃんが最後にした“増殖しかかった生き物の首を増殖していない人間の身体にすげ替える行為”にヒントがあればよかったなぁ。
もしかして私が見落としてるのかな。でも唐突感あったしな……。

というわけで、ごちそう様でした。
では、また。

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