当サイトではアフィリエイト広告を利用して商品を紹介しています
読書感想小説

【ネタバレ有】烙印の名はヒト/人間六度【初読感想】

この記事は約8分で読めます。

なんというか、想像以上に難しいというかややこしいというか。
文章が難しいのではなくて、この本の中に溢れている感情が難しいというか、私の中で咀嚼して腑に落ちて「あー。なるほど、こういう事なのかな?」っていうのがいまいちなくて、戸惑っている。

最初はアンドロイドが人間並みの思考能力を得て人間同等に働けるようになった社会で起こる、人間とアンドロイドの溝の話だと思ってたんだけど……、そういうわけでもないんだよなぁー。

序盤は確かにそういう話だと思った。
安価でアンドロイドを雇える結果、人間がいらなくなって、アンドロイドに仕事や居場所を追いやられた人間達の話。そこに奴隷貿易で先祖が儲けた男も現れて、「結局アンドロイドの登場は、読者の世界でいうところの安価な海外労働者の利用と同じではないのか?」という疑問を私達に投げかけてくる。

まあ実際はアンドロイドは機械で、外国人労働者は生きている人間なので一緒にできないんだけど。
でも「外から来た「私達」とは違う何かが、「私達」の仕事を脅かしていく」っていう感情としての構図は似ていると思う。

そしてアンドロイドが機械であり、人間にとっての所有物であるが故に生じる「道具であるはずのものが人間を殺した場合に誰が責任を取るのか?」という話。
主人公のアンドロイドは「道具」であるはずなのに殺人の罪に問われ、逆にその相棒であるアイザックは人間だけれど片腕に装着した機械の暴走による殺人ということで無罪を言い渡される。
私は人間で当たり前のように「裁かれる権利」があるんだけど、その「裁かれる権利」というのはアンドロイドが人間と同等の存在になった場合にどんな風に適用されるのか? ……なんてことを、この本を読みながらしみじみ考えさせられた。

で、まあそういう話だと思ってたんだけど。
最後まで行くと、「アンドロイドがもたらす人間社会への影響」って話ではなかったんですよね。

というか、思うんですが。

この本、月に主人公が行く話…………、必要だったのかな?

アンドロイドが人間と共存していくための障害や希望の話っていうのが、中盤までのテーマだったと感じてて、そこで話が終わった場合、この小説はシンプルでありがちなテーマにはなるけど、まとまった話だと思えるんだよ。

でも終盤になって急に主人公のアンドロイドが月に行くことになって、そこから話がややこしくなる。
ややこしいというか、ちゃぶ台をひっくり返されたというか。
今の今までアンドロイドが人間同等の権利を得るって話だったよね?! だったのが、いきなり「でも主人公のアンドロイドがヒトだと認められるようにお膳立てしたのは、ぜーんぶ人間側の都合でした!」ってなると、ちょっと。

おい、ちょっと待てよ。ってなるんだが。

結局アンドロイドは人間を越えられないってことだよね……?

だって月に行く理由が、「とんでもなくヤバイアンドロイドを人間が作ってしまったので宇宙に放逐したんだけど、そしたらそのアンドロイドが月を乗っ取って人間に危害を加えようとしてきた。で、その宇宙にいるアンドロイドを始末するには人間では無理なので、同じアンドロイドに始末してもらいます。ただ、その始末するアンドロイドは責任能力がなくてはいけないので、色々プレッシャーを与えてヒトにします」なんだよなぁー。

最初から最後まで、人間側の都合なんだが……??
いいのか。中盤までアンドロイドが人間になること、アンドロイドが人間側に及ぼす悪影響を書いていたのに、最後がこのオチで。

最終的に月でのやりとりで主人公とヤバイアンドロイドは人間の思惑とは違う答えを導き出して、ひとまず“人間が導き出せなかった答え”を示したってことになってるけど、でも中盤のありがちなラスト(アンドロイドと人間の共存)で終わっていても良かったんでは……?

いや、それとも私が何かしらのメッセージを受け止めきれてない可能性もあるのかな……。
どうなんだろう……。分からないんだけど……。

というわけで、「烙印の名はヒト/人間六度」の感想でした。
んー……。月の話が蛇足か、もしくは違う感想を抱くかで評価が変わりそう。私は正直読んでて、しっくりこなかったんだけど。

それでは、次の一冊でまた。

このページで紹介した本

コメント

タイトルとURLをコピーしました